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アイデア

臨時休校をどう乗り越えるか

2020年2月28日、政府から全国の小中学校などへ臨時休校の要請がありました。私の住むエリアも3月2日から4月5日まで休校が決定したようです。

子供が家にいる≒どちらかの親が在宅しないといけないということになり、全国の共働き世帯はその対応に苦慮されていることと思います。

今回は新型コロナウィルスの感染拡大を食い止めることが目的(効果の有無はさておき)のようですが、今後様々な理由で休校になることは考えられるため、休校=働けないにならないよう根本的かつ社会的な仕組みの改善が必要ではないかと思います。

従来の社会制度は多かれ少なかれ、男性が勤めに出て女性は「専業主婦」として家庭に残るということが前提になっており、今回の政府の要請もおそらくその前提に立ち、躊躇することなく全国一律に出してしまったように見えます。

しかし厚生労働省の統計データによると、共働き世帯の割合は2018年時点で42.6%まで増え、女性の社会進出のトレンドを鑑みると今後も増え続けることは確実です。

日本国内の制度設計の弱点として、バックアップが考慮されていないことが多いことが挙げられます。効率重視でムダのない状態が良しとされてきたからか、設備も人員も「ちょうど」の状態に設定されていることが多くないでしょうか?

例えば、小学校の教員は担任の先生がちょうどの数揃えられているため、もし担任の先生が病欠すると欠員補充が大変で、先生も休みづらいという状況になります。しかし北欧などでは、人は当然病気になるという前提で常にバックアップの先生がいて、気兼ねなく休めるそうです。

バックアップは必要に迫られない限りムダに見えてしまうかもしれませんが、可用性の高いシステムには適度なムダが必要ということを認識することが重要です。

では、今後の共働きの家庭が同様の問題に対処するために、どのようなバックアップが考えられるでしょうか?

家庭のバックアップ

もし既にリタイアしている親族が近所に住んでいる場合、一時的に子供の面倒を見てもらうことができるかもしれません。

以前、仕事で中国と行き来していましたが、女性の社会進出は日本よりかなり進んでおり、その背景には祖父母が子(孫)育てに積極的に関わっている、というよりむしろ子育ては祖父母の役割という習慣があるようでした。

地域のバックアップ

現在都心部では近所付き合いが希薄になっていますが、昔を振り返ると、近所に住んでいる同世代の子供の家庭に毎日のように遊びに行き、時には晩御飯をご馳走になって帰ってくるといったことが多かったのではないでしょうか?

共働きの割合が増えているので当時と同じではないかもしれませんが、先述の家庭のバックアップと合わせるとなかなかの受け皿になるのではないでしょうか?

企業のバックアップ

企業が共働き世帯を直接的にサポートできることは限られているかもしれませんが、アイデア次第ではまだまだ改善できることも多いのではないかと思います。

当社イノベーター・ジャパンは、2016年から&donutsプロジェクトと題して、職住近接の働き方を実験的に推進しています。現在千葉県柏市と神奈川県茅ヶ崎市の2拠点にオフィスを開設し、近隣に住む方々を雇用しています。

人がいるところに仕事を移動 育児中女性が活躍する職住近接オフィス

月刊「事業構想」

その多くは育児中の女性であるため、子供の急な発熱等による欠勤を想定して、バックアップの仕組みを常に考えています。

  • 子供を連れてこられるオフィス環境
  • 緊急時に在宅で勤務できる環境

この2つがあることによって、これまで子供の急病や夏休みもチームで乗り切ってきた実績があるため、今回臨時休校が発表された際にも大きな動揺はありませんでした。特に子供を連れてこられるオフィス環境は、業務の継続以外にも子供の教育の観点でもメリットが多いと感じています。

長時間の通勤が前提となる都心のオフィスでは難しくても、職住近接だと実現できることが多く、実際企業&地域のバックアップとして機能しています。

新型コロナウィルスによる健康的・社会的な被害は何としても食い止めなければなりませんが、変化のきっかけとして捉え、これまでできなかったチャレンジをしてみてもいいのではないでしょうか。

バックアップはムダではなく、可用性の高い社会システムと、その上で暮らす人々のウェルビーイングを実現するために必要不可欠なものとして、身の回りを見直してみませんか?

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Happy New Year 2020

明けましておめでとうございます。

年が明けて早くも1週間が過ぎようとしていますが、皆さまいかがお過ごしでしょうか?

THE GAME CHANGERS

私は年末にNETFLIXで観た『THE GAME CHANGERS』に影響を受け、にわかベジタリアンを試行していますが、心なしか感覚が澄んできて、今のところ体調もすこぶる好調なので、しばらく続けてみようと思います。


さて、イノベーター・ジャパンは本日より2020年の営業を開始しました。今年は7月に創業10周年を迎え、当社にとって大きな節目となる年になります。昨年末のブログ「Innovator’s Transformation 2019」に書いたように、2019年には様々な変化がありましたが、それらは2020年に向けた仕込みであり、今年一つ一つ結実させていく必要があります。

さらに、それら全てに筋を通し、イノベーター・ジャパンのMISSION・VISIONとの整合性を取っていくことで次の10年の土台となる「節」をつくりたいと思います。(筋とか節とか、竹と成長は密接な関係なんですね)

改めて、イノベーター・ジャパンのMISSIONは、

人の可能性を最大限に引き出しウェルビーイングな社会を実現する。

そのための手段として、テクノロジーとデザインを徹底的に研究し活用していきます。決してそれらの手段を目的にすることなく、常に「人」に焦点を当てて

このMISSIONを達成するためには、もちろん私たちだけの力ではどうにもなりません。当社は常にオープンに、外部の専門家の方々とも積極的に連携していきます。今年はさらに、国内外の学術機関とも連携していきたいと考えています。

これから人も組織も、境界に囚われていては成果を上げられない時代になります。国境・境遇・環境などあらゆる境界は、人々が心の中に勝手につくり上げた概念でしかありません。そもそもそんなものに縛られる必要はないはず。

2020年はぜひ皆さんとボーダーレスに繋がり、共に楽しみながら成長する年にしたいと思います。

本年も何卒よろしくお願いいたします。

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Innovator’s Transformation 2019

2019年もあとわずか。年々1年が短くなっていくように感じるのは気のせいでしょうか?

そんな一瞬で過ぎ去ろうとしている2019年(令和元年!)にも、イノベーター・ジャパンにとって重要な「Transformation」がいくつかあったので振り返っておきたいと思います。

Innovator’s Transformation 2019 ベスト5

#5 人事部発足

イノベーター・ジャパン 社内ワークショップ
イノベーター・ジャパン 社内ワークショップ

イノベーター・ジャパン創業10年目にして、ようやく人事部が発足しました。と言っても普通の「人事部」ではなく、「Human Experience」をデザインするチームです。

これまでは、私を含む経営メンバーが直接人事まわりの手続きや制度設計を行っていたのですが、社員数が増えるにつれかなりの時間を人事関連に費やしていることに気付きました。

もちろん人事は企業の最も重要な事項のひとつではあるのですが、それだけでは現状最適化にしかならないので、未来を洞察し、チャレンジする組織に変える(戻す)べく人事部を発足しました。

ちなみに今年入社した人事部長(?)は、私がたまに口にする抽象的な情報をうまく言語化してくれたり、プライベートでも研究開発をしてコードを書いていたり、どうやらタダ者ではなさそうです。

#4 &donuts湘南オープン

&donuts湘南
&donuts 湘南オフィス

イノベーター・ジャパンが展開する職住近接で育児や介護中の働き方を変えるプロジェクト「&donuts」。2016年に私の故郷でもある千葉県柏市で活動を開始したところ、あっという間にメンバーも増え、オフィスも増床しましたが、1拠点では限界に。

元々1拠点の人数は20人程度にして、複数拠点に展開した方が社会的なメリットが大きいだろうと考えていました。なぜなら、未だにパートナーの転勤を理由にキャリアを諦めないとならない人が多いからです。実際に&donutsでも同様の理由でリタイアするメンバーがいました。(彼女には地方に転居後も業務委託でお仕事をお願いしています)

2018年後半に2拠点目開設の計画が本格的になり、候補地を決めるべく各地でイベントを開催して&donutsのビジョンや価値観とそれぞれの街のマッチング度合いを確かめていました。最終的に決まったのは神奈川県の湘南エリア。自ら生活の地として湘南を選び、ブレない価値観を持ってキャリアを積み重ねてきた人が多いように感じました。

&donutsでは、ただ郊外で仕事ができればいいという受け身な方ではなく、脱都心の通勤に縛られない働き方を一緒に探っていける方にジョインしてもらっているので、価値観の一致は非常に重要です。

2019年3月に辻堂駅前のマンションの一室でスタートした&donuts湘南も、すぐに手狭になり、同年10月に茅ヶ崎駅前のオフィスに移転しました。また、つい先日&donutsプロジェクトがWork Story Award 2019の審査員特別賞を受賞し、さらなる追い風が吹きそうです。

Work Story Award 2019 審査員特別賞受賞
Work Story Award 2019 贈賞式

#3 インド事業開始

2019年5月 インドにて

イノベーター・ジャパンは創業当初からグローバル展開、というより非ドメスティックを強く意識しています。なぜなら、私が前職のサイバーエージェントで海外で働く機会をいただいてから、「日本で、日本人だけで、日本の顧客だけのために働くこと」に強い違和感を感じているからです。

当社に在籍しているインド出身のメンバーにアレンジしてもらい、今年5月に初めてインドを訪れました。以前ドラマ「深夜特急」で観たインドのイメージとは全く異なり、ITの社会実装が進んでいて、エリアによっては東京を凌ぐくらい都会化していたことに衝撃を受けました。

1週間の滞在の間にいくつかの企業を訪問し、その中の数社と実際にプロジェクト化の計画が進んでいますが、今年10月にまずCarbun8社との業務提携を発表しました。Carbun8社はインドのテレコム業界で経験の長いJain氏が立ち上げたベンチャーで、インドをはじめ周辺諸国の携帯の通信業者や機器メーカーにコンテンツを供給しています。

日本はモバイル通信環境においてはしばらく世界をリードしており、2G(ガラケー)の時代からモバイルコンテンツを開発し続けています。特にゲームコンテンツにおいて世界に誇れるレベルにあるのは、東京ゲームショウを見ても明らかです。

イノベーター・ジャパンはCarbun8社と提携し、日本に留まっている良質なコンテンツをグローバル市場に届けたいと考えています。まだまだ始まったばかりのプロジェクトですが、ジャパンをイノベートするための重要な試みになると思いますので、応援よろしくお願いします。

#2 Media DX / Open Media Suitesリリース

Media DX for Publishers

イノベーター・ジャパンは、主な事業のひとつとしてデジタルトランスフォーメーション(DX)の推進を行っています。その中でも、メディア領域の経験は長く、創業から約10年間、メディアのDXをやり続けていたと言っても過言でありません。

メディアのDXと聞くと、「紙のメディアをWebメディアにするだけでしょ?」と思われるかもしれません。しかしそれは、よくあるDXとデジタイゼーションの混同で、本質ではありません。確かにWebメディア化も一つの側面としてあるかもしれませんが、DXによって事業の次元が変わっています。

これまでメディア事業というのは、コンテンツを売る、コンテンツを求めてくる特定の人々をターゲットとする広告を売る、というのがビジネスモデルでした。それがDXによって個人を特定し、行動履歴を蓄積できるようになると、コンテンツはむしろ集客ツールに近くなり、より高単価なサービスの販売や、サブスクリプション等のLTVを意識したサービス構成に変わり、ビジネスモデル自体が大きく変わってきます。

頭ではわかっていてもなかなか変革できない、あるいはシステムは構築したもののうまく運用できない、という企業を多く見てきたため、イノベーター・ジャパンはメディアのDXに付随するシステムや運用サービスをパッケージにして提供することにしました。このソリューション全体を「Media DX」、それを構成するコアシステムを「Open Media Suite(OMS)」としてリリースし、ただいま絶賛ご相談受付中です。

#1 CI/VIバージョンアップ

Innovator Japan
イノベーター・ジャパン 新ロゴ

イノベーター・ジャパンは、今年10月コーポレートサイトのリニューアルとともに、MISSIONやVISION等のCIと、ロゴマーク等のVIをバージョンアップしました。2020年に創業10周年を迎えるにあたり、今のうちから「身だしなみ」を整えておこう、というクリエイティブディレクターからの提案でした。

私の立場からすると、創業以来ともにしてきたCI/VIに手を加えるというのは、本当に変えてしまっていいのか、勇気の要る判断でした。しかし、企業は環境や社会という絶えず変化し続けているものの中で有機的に存在しているものであり、同時に人というまさに有機的な生命の集合体。むしろ変化しないことの方が異常であるのかもしれません。

新バージョンのCIはコーポレートサイトでご覧いただけるのですが、今回のバージョンアップでキーワードとなるのは「Well-being」です。これまで「豊か」と表現していた概念を、あえて「Well-being」と言い換えました。正直なところ、まだ日本では理解が普及しているとは言えず、まだ喉に引っかかる感じがあるかもしれません。実際、社内でも「意味が良くわからない」という意見が多く出ました。

しかし、そもそもベンチャー企業は(少なくとも当社は)未知の領域にVisionを掲げ、誰かの引いた道を歩くのではなく自ら切り拓く存在だと考えています。現時点で理解可能な概念だけでは決して未来は切り拓けないと思い、あえてまだ理解を得づらいけど未来に必要なワードとして「Well-being」を選びました。

私は今の日本は、均一の豊かさを追い求めた結果、多くの人が幸福感を感じていない状態になってしまったと考えています。本来、豊かさも幸福度も、人ぞれぞれ異なるモノサシを持っているはずで、他人に決められるものではないからです。

イノベーター・ジャパンでは、人それぞれの好奇心や探究心を生かし、各分野の専門パートナーと連携し、作り手がワクワクしながら生み出した価値を、それを気に入っていただけるお客様に届けたいと考えています。

働くということは、必ずしも義務や苦行ではなく、社会、しいては環境における存在意義ではないかと。適材適所で働けること、環境と自然にリンクしていることこそが究極の豊かさであり、Well-beingであるという理念に基づき、2020年も多動力を持ってチャレンジしていきたいと思いますので、応援よろしくお願いします!

この記事はイノベーター・ジャパンAdvent Calendar 2019の12/25(最終日)の記事です。