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SXSW 2016 番外編

South By Southwest(以下、SXSW)に初参加してきました。(文末にフォトギャラリーあり)

SXSWとは、
アメリカ テキサス州のオースティンで毎年開催される、映画・音楽・インタラクティブメディアの祭典。今年で30年目を迎え、世界中から約8.5万人が集まった模様。

今年の目玉コンテンツはオバマ大統領による基調講演。これからの社会におけるデジタルテクノロジーの重要性を説き、政府も率先して取り組んでいることを強調していた。米国の広報戦略のうまさもさることながら、トップがしっかりテクノロジーを理解し、自分の言葉として話せるところは日本が見習わないといけないところ。

また、個人的にはX JAPANのドキュメンタリー映画「We Are X」の上映会に参加できたのが大きな収穫だった。何を隠そう初期の頃からのコアなファンなので、涙なしには観られなかった。3/18にはYOSHIKIのライブパフォーマンスがあったのだが、これには残念ながら参加できず。

まあ、SXSWのコンテンツに関しては各所でレポートされているのでそちらに譲るとして、ここではイベント運営や現地のカルチャーなどバックステージの部分にフォーカスしたいと思う。

ちなみに、月刊「事業構想」4/1発売号にIMJ江端さんと共著で取材記事を書かせていただいたので、そちらもご参照ください。

ベンチャーの登竜門 ツイッターに続く成長株の企業は?

イベント運営

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SXSWに限らないかもしれないが、とにかく規模が大きい。動員数だけで言えば日本国内のイベントでも大きいものはあるが、街全体がお祭り状態になることはあまりないと思う。オースティンのダウンタウンエリアはそこまで広くないものの、町中のホテルやレストランがほぼ全て会場になっている。

SXSWが世界中から人を集め、町中のホテルが満室になり、郊外のホテルにも人が溢れるから交通機関も潤い、数百のカンファレンスを運営するために膨大な数の学生がボランティアとして参加している。もはや単なるイベントというより、オースティン市の一大事業のレベルに達している。

SXSWの影響もあってか、ここ数年オースティンを拠点とするスタートアップ企業が増えているらしい。ニューヨークやサンフランシスコの物価が高騰しているため、生活コストが低く温暖な気候のテキサスが人気とのこと。

一方、SXSWのブランドが確立されてきたために、出展料が高騰しているという情報もあった。サンフランシスコの某企業から参加されていた方は「ここ数年毎年出展していたが、今年は出展を見合わせた」と話しており、出展社の顔ぶれが変わり「昨年より劣化した」という意見もあった。30周年を迎える今回が何らかの転機になるのかもしれない。

現地のカルチャー

現地の人々におすすめを聞くと、ほぼ100%「バーベキュー」と「テキシカン」という答えが返ってきた。

バーベキューは日本でもよくやる「BBQ」とは違い、豪快に焼く肉料理のこと。テキシカンはテキサス風メキシコ料理のことを言うらしい。南に下ればメキシコとの国境なので、たしかに街中にはメキシコ料理店が多く、滞在中もかなりの頻度でメキシコ料理を食べていた気がする。バーベキューについては、行く店によるのかもしれないが、正直日本で食べる肉の方がはるかに美味しいと感じた。

住・交通

イベント会期中はホテルはどこも満室だった。SXSWが仲介してホテルの予約ができるのだが、チケット販売当日にダウンタウンエリアのホテルは売り切れてしまうらしい。そこで大活躍なのがAirbnb。日本ではまだグレーゾーンだが、こちらでは一般的に使われている。会期中は値段が高騰するため、自分は旅行に行ってでも家を貸し出して小銭稼ぎをする人も多いらしい。台湾から参加していた友人グループは4人で高級マンションをシェアしていたが、ホテルよりもはるかに安く借りられていた。

自分はダウンタウンから10kmほど離れた郊外のホテルに泊まっていたのだが、日々の交通手段として使ったのがLyft。東京でも微妙に使われているUber(正確に言うとUberではなくUberX)の対抗馬。今回、LyftがSXSWの公式スポンサーということで、参加者全員に$10程度のクーポンコードを配布していたりLyft推しな雰囲気だった。

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Lyftは日本で言うところの白タクで、一般人がドライバー登録をして客の輸送をしている。そのため車種も様々で、今回乗ったのはトヨタのカローラからDodgeのスポーツカーまで様々だった。ちなみに、多くのドライバーはLyftとUberXの両方にドライバー登録しており、状況によって使い分けているとのこと。ただ、運営会社に支払うマージンがUberXが25%なのに対してLyftが20%らしく、どのドライバーもLyftを推していた。みんなコミュニケーション能力が高くて目的地までのトークが楽しく、乗車後の評価は毎回★5つにしてしまった。

Lyftだけで生計を立てているドライバーも多いようで、スマートフォンが新しい職業を生み、人々の生活を変えているということを改めて感じさせるサービスだった。こういったイノベーションにいつもブレーキがかかる日本がもどかしい。

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といった感じでSXSWに行ってイベントそのもの以外からも色々と刺激を受けてきたわけだが、逆にもやっとした焦りのようなものも感じた。SWSXで見て聞いてきた多くの会社が、世界中の人材とコラボレーションしながらチャレンジし続けている状況の中で、自分たちは日本に安住し過ぎていないかと。今回、日本からブース出展している会社は少なからずあったものの、個人的には世界の大きな動きに取り残されているような感覚を受けた。

一方、堂々と話されたり展示されたりしていても、まだ構想段階であったり、正直なところイマイチと感じるものも多かった。真面目につくって実現段階まで持っていっても、最終的に世の中に伝わらなければ無いのも同然ということを考えると、実はこういったプレゼン先行型が勝ち組になっていくことが多いのかもしれない。

であれば我々も構想やプロトタイプ段階のサービスをもっとアピールすべく、来年あたりSXSWに出展するのもあり、かな?

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ビジネス

組織におけるオフローダーとオンローダー

車やバイク好きにはおなじみのワード、「オフロード」と「オンロード」。

その名の通り、舗装されていない砂利や泥などの道無き道をオフロード、舗装され車やバイクが走るために整備された道をオンロードと呼びます。また、それぞれの道に最適化されて開発された車両をオフローダー、オンローダーと呼んでいます。

最近思うのは、人も同様にオフローダーとオンローダーの2種類の人がいるなということ。

オフローダーは、未開拓の分野に積極的にチャレンジし、他人が行ったことのないところに行くことに喜びを感じるタイプの人。起業家やアーティストに多い気がする。

一方、オンローダーは、ある程度ルールや環境が整備された状態で最大のパフォーマンスを発揮し、他人とのレースに勝つことに喜びを感じるタイプの人。世の中の多くの人はこのタイプで、企業で出世しやすいのもこのタイプ。

どちらが良いとか悪いとかではなく、組織の成長ステージによって最適なバランスがあると思う。

創業ステージでは、もちろん数名のオフローダーが集まって起業することが多いので、オフローダーの比率が圧倒的に高い。

しかしながら、成長ステージになると、オペレーション業務や俗に言う「1→10」のための業務が増えてくるため、オンローダーが必要になってくる。

オンローダーがパフォーマンスを出すためには、荒れ地をならす「舗装」、つまり人事や目標管理などの様々なルールや制度を整える必要が出てくる。

難しいのは、舗装し過ぎてしまうとオフローダーのパフォーマンスを落としてしまうことになりかねないところ。

継続的な成長を狙う企業にとって、新しい市場やビジネスを開拓するオフローダーの存在は必須。

日本の大企業が停滞する大きな原因として、ルールや制度をきれいに整え、舗装し過ぎたことによって、オフローダーが生息しづらい環境にしてしまったことがあると思う。上場に向けた「舗装」によって会社の勢いが一時的に衰えてしまったという話もよく聞く。

優秀なオンローダーほど、隅から隅まできれいに舗装しようとしてくれるのだが、必ずしもそれが企業の成長につながっていないケースも多いので、オンロードとオフロードのバランスを取るのは経営者の重要な仕事かもしれない。個人的な感覚では、少なくとも会社全体の20%はオフローダーであって欲しい。

それは日本全体でも同じことが言えて、オフロード(=カオス)の状況でパフォーマンスを出せるオフローダー人材が育つ環境を整えていかないと、このまま縮小していく一方だと思う。

オフローダーが原野を開拓し、オンローダーが適切なところを舗装してレースをする、といった役割分担をお互いに認識し尊重することが、組織や社会の継続的な発展には欠かせないと思うのでした。

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デザイン ビジネス 時事問題

東京オリンピックのロゴ問題とデザイン業界の闇

東京オリンピックのロゴ、やはりボツにするみたいですね。

おそらく舞台裏は想像を絶するくらいドロドロなことになっているのでしょう。運営(権力)サイドも、従来は会議室に「身内」を集めて、「良きように」決めれば思い通りに事を進められたのに、インターネットによってそうはいかなくなってしまったことに気付きかなり焦ったはず。

今回のロゴデザインが云々というところは、何も影響を及ぼせる立場にいないので、正直どうでも良いのですが、自分も分野は違えど関わっているデザインの世界にこれほどまでにパクりが蔓延してしまうことに興味がある。

世の中のデザイナーやクリエイターは、人と同じことをするのが大嫌いで、オリジナルの何かを実現したいからその職業を選んだはず。しかし、好きで始めたデザインが、いつの間にか「仕事」になり、以前であれば頼まれてもしなかったパクりが横行してしまう。

権利侵害は良くないことはもちろんだが、元々尖っていた人をそこまで変えてしまう環境にも何か問題があるのではないかと考えている。

自分が主要因だと考えるのは「デザイン」に対するコンセンサスの低さ。日本において一般には「デザイン」は狭義のビジュアルデザインと認識されているが、本来は哲学や想いなどのコンセプトに基づき、何らかの目的を達成するための論理的な思考であると考えている。

こういったギャップが潜在的にあるため、クライアントとデザイナーの間で話が噛み合わないことが往々にして起こる。デザイナーにはコンセプトと目的だけ伝えて後は任せる、というのがベストなスタイルだと考えているが、多くの場合、発注段階で「赤基調で」とか「ここは丸く」などのビジュアル的なスペックを指示してしまったり、「こんなイメージで」とネットから拾ってきたイメージを見せたりする。

こうなってしまうと、デザイナーにできることはクライアントの指示に従い絵を描くくらいで、「デザイン」をする余地はほぼ無くなる。ラフ案を出してからも、ひたすらクライアントの「好み」に近づけるために修正を繰り返す。こういった案件を繰り返すうちに、もしかするとデザイナーの心はデザインから離れ、クライアントとの信頼関係が崩れ、やっつけ仕事になっていくのかもしれない。

佐野氏を擁護するわけではないが、事務所のアシスタントもそういった行為に手を染めてしまうあたり、業界全体の闇を感じてしまう。

しかしながら、私は本来のデザイン力が日本の持つ最も重要なポテンシャルの一つだと考えているので、デザインに対する正しい理解を深め、より高次元なデザインワークができる社会にしていきたい。

佐野氏とは個人的面識は無いが、起きてしまったことは清算して経験とし、デザイン業界にインパクトを与えるような復活劇をデザインしてくれることを期待したい。